Everything will be fine.

少しでも笑ってやってください!

その男、凶暴につきを観たよ

f:id:goremonkey9999:20210925013409j:image

1989年公開。監督&主演は北野武。出演は白龍、川上麻衣子平泉成佐野史郎岸部一徳。ジャンルはクライム。

まだ肉の着く頃の北野武がそのキレッキレな才能を遺憾無く爆発させた作品である。元々は監督:深作欣二、主演:ビートたけしで制作が行われる予定であったがすったもんだの末、監督&主演を北野武が務める事になった。その後の監督:北野武の活躍は皆様のご存知の通りである。「ソナチネ」で欧州を中心に北野武映画ファンを生み、「HANA-BI」でヴェネツィア国際映画祭・金獅子賞を受賞すると、「アウトレイジ」シリーズは大ヒットしている。そんなたけしのデビュー作であり、最もバイオレンスに富んだ作品が本作の「その男、凶暴につき」である。当時42歳にして芸能界のトップに君臨していたたけしが映画界に名乗り出たのだ。

本作の主人公である北野武演じる刑事・我妻は傍若無人です。手段は選ばず強行突破。気が短く暴力での解決を厭わないのです。冒頭で老人を襲う少年たちが現れますが、少年の家に押し込み暴力で解決します。おまけに犯人を走って追いかけますが、体力が尽きると見逃してしまったり、警察官としての正義がまるで見られません。おそらく、映画ばかりの熱血刑事だけではなく現実にはこういった刑事もいるだろうというリアルを描いてるんだと思います。本作では突発的な銃撃戦が度々起こります。映画でよくある「さあ行くぞ!」といった気迫は皆無でいきなり始まります。静かな雰囲気から響き渡る銃声音はより一層怖さを増しますね。あとはどうでもいいようなシーン、我妻とその部下である菊池の運転をするところやただ歩いているだけといったところを長回ししています。なんだかタランティーノ作品にも通ずるような雰囲気です。たださっきも言いましたが、雰囲気はハードボイルドよろしくです。

そんな中でも本作の名シーンといえば、金属バットを持った犯人が刑事を殴り殺す、ラストシーンの我妻と清弘の銃撃戦でしょう。金属バットで刑事を殴り殺すと刑事の額からは大量の血が溢れ出すんですが、その表情といったら目に焼き付いてしまいますね。人が死に追いやられたときは色んな表情があるんでしょうけど、金属バットで殴打されたらあの顔になるんでしょうきっと。我妻と清弘の銃撃戦の中で2人に感情はありません。目的は目の前の人間を殺すだけ。立場上、我妻が刑事で清弘は殺し屋です。でもそこには我妻の正義はないんです。あるのは暴力だけです。その暴力は狂気です。警察官の使命は市民を守ることだ!安全な街で暮らせるよう平和を守るぞ!だなんてあれは建前で内部を見てみればこのように凶暴な刑事もいる訳です。我妻は警察学校で一体何を学んだのでしょうか。おそらく一匹狼だったに違いありません。監督デビュー作にしてこの希薄に満ちた「その男、凶暴につき」。今から30年以上前でありながらたけし作品最高傑作。サブスクで観れないのが残念。