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菊次郎の夏を観たよ

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1999年公開。監督&主演は北野武。出演は関口雄介、岸本加世子、グレート義太夫井手らっきょビートきよし吉行和子。ジャンルはドラマ。

北野作品は過激でバイオレンスである。これは通説になりつつあるけど、本作ではそういったアウトレイジ宜しくな怖い人たちは出てきません。タイトルにもある菊次郎は北野武の実際の父親の名前です。そういえば一昔前は「菊次郎とさき」ってドラマがやってましたね。菊次郎が陣内孝則でさきは室井滋が演じてました。こちらはかなり子どもから大人まで楽しめるような作風になっています。

ですが、本作は物語は複雑でシリアスです。東京の下町で祖母と暮らす小学生の正男は母親を探す決心します。僅かなお金を抱え旅立ちますがいじめっ子たちが正夫を襲います。そこに現れたのが祖母の友達でスナックを運営する岸本加世子ことおばさんとチンピラ同然のビートたけしこと菊次郎であります。おばさんはこのチンピラに正夫の母親探しを同行させます。そこでさっそく菊次郎が一言「金くれ!」そんなこんなで母親探しをする菊次郎と正夫でありましたが、さすがは菊次郎。貰った大金で競輪に行きますw さっそく本末転倒です。でも正夫は菊次郎に言われるがままです。大金も底を尽きて自分より歳上のおじさんをハゲ呼ばわりする菊次郎は苦肉の策なのかどうか分かりませんが正夫に当たりを予想させます。そうするとアッパレです。まぐれではありますが大金を手に入れ、高級ホテルで泊まることになります。とはいえ結局はただのまぐれで当てたに過ぎなかったのでお金は底を着きます。なんとしてでも母親の家に行かなくてはならないとここでやっと本題に戻るわけです。最初からそうしろよと。そこでここからはタクシー運転手の車を奪ったりヒッチハイクでドライバーと喧嘩になったりめちゃくちゃです。そんな菊次郎ですが変質者から正夫を本気で助けようと人情を見せます。そんなこんなで母親の家に何とかたどり着いた2人でしたが、そこで待っていたのは別の家庭を持つ母親でした。いつもはふざけている菊次郎もこの時とばかりはいても経ってもいられません。「違う家みたいだな」と機転を聞かす菊次郎。でも菊次郎も正夫と同じ環境で育ったのです。ぐっすりと眠る正夫を見守るとき、自身と正夫を重ねていたのでしょう。なんとも悲しい現実です。とはいえ悲しいだけでは終わりません。途中で優しいおじさん達と楽しい一時をすごしたり、僅かな期間でしたが正夫にとって忘れられない夏休みになったに違いないでしょう。

本作は映画そのものよりも久石譲のSummerがとても素晴らしいです。冒頭からSummerが流れてえらく長い風景描写が続きますが、それがハマりすぎて一気にのめり込める。そういえばたけしはインタビューで「器用に演技をする子どもは気持ち悪い」と語っていた。そういう意味では天才子役が活躍する映画に対するアンチテーゼでもある訳ですよ。あくまでも主役はチンピラな菊次郎。そこはドラマでも一貫してる。子どもがいかに不完全であるか、それは自然的な摂理であると思うんです。それにしても夏は田舎が非常にマッチしますね。夏になると思い出す映画です。