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ボーダーラインを観たよ

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2015年公開。監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ。出演はエミリー・ブラントベニチオ・デル・トロジョシュ・ブローリンダニエル・カルーヤ、ジョン・バーサン。ジャンルはアクション、サスペンス。

まずはタイトルの原題である"sicario"はスペイン語で『殺し屋』の意味である。原題では日本人には分かりづらいし、そのまんま直訳して殺し屋ではナンセンスってことで、『ボーダーライン』にしたって訳だな。この意味は境界線。アメリカとメキシコの境界線で起きているメキシコ麻薬戦争について描いてるってことでボーダーライン。日本は島国なんで境界線ないんで海外行くには空か海しかない訳だ。そんな麻薬カルテルの舞台は日本人にとって未曾有の地である。

あまりにも日本とはかけ離れすぎている海外のリアルと思いきや驚いてるのは日本人だけじゃない。本作の主人公であるFBI捜査官エミリー・ブラントものっけからメキシコ麻薬戦争の現実に驚きを隠せないのである。彼女は国内最優秀捜査官として凶悪犯を制圧してきた。そんな彼女ですらメキシコを主戦場とするベニチオ・デル・トロ率いる謎の組織の前では完全にお客さん扱いなのである。その態度と言動は『俺らが何とかするから、お嬢ちゃんは後ろで見ててや』と言わんばかりである。俺は日本から外に出たことがない、視野の狭いジャパニーズなもんで、これには驚いた。アメリカも犯罪が多くて危険な街として認識していたが、それを凌ぐほどメキシコは危険が潜んでいる街であると知った時は"メキシコすげぇな"ってなりましたわ。いやいや語彙力ないぞ。にしてもいつも気が抜けない状況からか、ストレスにより喫煙を再開してしまうエミリーとお母さん役のダニエル・カルーヤ。謎の組織はダニエルに関しては子ども扱いで相手にしてない。完全に蚊帳の外である。

しかしまーこの組織が明らかになるのは映画の後半になる。それまでエミリー・ブラント及び我々視聴者は"分からない"という恐怖を体験する。そして映画全体に漂っている何が起こるか"分からない"緊張感が本作の味噌である。以前、当ブログで紹介したJ・ホラー界の金字塔『CURE/キュア』も分からないという恐怖が作品全体に漂っている。組織の全貌が明らかになってからは怒涛の畳み掛けがされているが、そこでも緊張感は保っている。これは結構観るのが疲れた。

ここ最近では直木賞を受賞した佐藤究『テスカトリポカ』も麻薬カルテルをテーマに舞台は東京と川崎である。東京=アメリカ、川崎=メキシコとし多摩川が境界線である。日本のギャングといえばヤクザだ。ヤクザは義理と人情、堅気には手を出さないという掟がある。しかし、メキシコのギャングにはそういった掟やルールは存在しない。もしかしたらあるのかもしれないけど、分からない。アメリカとメキシコの闇は底知れぬほど深いものがあった。